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石坂公成先生ご逝去の報に接し

更新日:2018/08/20

リリース一般向け

石坂公成先生のご逝去の報を受け、青天の霹靂、驚愕するとともに残念至極、巨星落つ。深い悲しみに沈溺した。

 

先生との季節のご挨拶は、毎年小生の方から先にお送りしていたが、今年は先生から先んじて、しかも例年より早く6月下旬に御中元としてサクランボを贈っていただいた。今考えてみると、それも先生のご体調と関係があったのかなと沈思した。先生は何年か前に心臓の手術を受けられ、しばらくは山形県外への旅行を禁じられておられたと仄聞していた。しかし、2年前に開催された日本アレルギー学会の”IgE発見五十周年記念シンポジウム”及び”記念祝賀会”には出席され、IgEの研究に纏わる懐かしいお話を雄弁にご講演された。久方ぶりにお会いした先生は大変お元気そうであり、先生のご壮健を祝福した。そのことからも先生のご逝去は信じ難かった。

 

先生はいくつもの国際的な業績を残しておられるが、特筆すべきはアレルギーと密接な関係を持つIgEの発見である。先生が2度目の渡米される時にお会いして色々な話をさせていただいたが、その時、先生はレアギン(reactiveより来た名称)の本体についての研究を目的に渡米するのだと熱っぽく語られたのがつい先日のように思い出される。アレルギーと密接な関係を有する活性の高い血中成分として当時レアギンが、国際的にも多くの研究者の研究の対象になっていたが、その頃は我が国ではレアギンを高濃度に有する血液を得ることは至難であった。しかしアメリカではブタクサ花粉症での血中レアギン濃度の高い症例が少なくないので、研究の場としては色々な点で日本よりも好ましいと考えられたのである。レアギンが新しい免疫グロブリンIgEであるという発見は、先生ご自身の体を実験に用いるなどの血の滲むような石坂先生ご夫妻のご努力の結実である。IgEの発見により、それまでは、「群盲、象を撫でる」と表現されていたアレルギーが、科学的な手法により解明されるようになったのである。先生のこの業績は国際的にも高く評価され、ノーベル賞の候補にもノミネートされた。残念ながらノーベル賞受賞には至らなかったが、国内では恩賜賞、文化勲章など、国際的にはガードナ国際賞、パサノ賞など、ノーベル賞以外の考えられるすべての賞を受賞されておられる。先生は我々にとっては太陽のような存在であられた。

 

生者必滅、会者定離はこの世の常とは申せ、現世の儚さと無常を痛感する。先生とは今や幽明相隔てることとなった。先生の在りし日の御姿を偲びながら、ここに改めて哀心よりご冥福をお祈りさせていただく。どうか安らかにお眠りください。

 

公益財団法人日本アレルギー協会
元理事長・顧問 宮本 昭正